研究内容
地域資源管理はこれまで、その利用に直接的に関わる農山漁村住民に任されてきた側面が大きい。しかしながら現在は、農林水産業の衰退に伴いこうした資源管理を農山漁村の一次産業関係者のみで担うことは困難な状況を迎えている。 こうした状況と反対に、国民の自然に対する認識の変化に対応し、地域資源の存在は「貴重な国民的財産」と受け止められるようになっている。 こうした矛盾を解消し、地域資源を持続可能な形で保全・利用していくためには第一に社会的に農林水産業をいかに位置づけ、その地域資源管理の担い手としての機能を強化していくこと、第二に地域資源管理に関わる費用負担を農山漁村地域だけに負わせることなく、都市住民などの新たな主体も加えた環境ガバナンスを構築していくことが欠かせない。 こうした観点から本研究室の研究内容は以下のように区分できる。 ①農山漁村・農林漁業の振興に関わる社会科学的分析と提案 森林の総合利用の提案、自然公園利用による農山漁村振興、マーケティング手法を応用した農林水産物ならびに農山漁村空間の6次産業化、交通不便な農山漁村における公共交通の再構築など ②地域資源利用の放棄がもたらした問題の抽出とその解消方法 農村集落におけるクマ被害対策をになう多様な主体の協働体制の構築、人間の利用により形成された草原維持のための新たなガバナンス体制の構築、手入れ不足人工林への都市住民ボランティア参加 ③東日本大震災にともなう原発事故による放射性物質拡散が地域資源利用に与えた影響とそこからの復興 福島県内野外レクリエーション施設に及ぼした放射性物質拡散の影響と復興過程、岩手・宮城両県における原木シイタケ生産者に方放射性物質拡散が与えた影響、福島県内の農村集落における自然資源としての山菜・きのこ利用の変容について 以上のように本研究室の研究内容は多岐にわたるが、総じて言えば自然と人間の間の関係性をとうのが本研究室の目的であり、環境社会学・森林政策学などの手法を用いて研究を実施している。