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研究室紹介

生体熱制御システム学研究室(応用生物化学科)

私たちの研究室では、発熱植物における呼吸調節メカニズム等の生体エネルギー変換に関する研究を行っています。具体的には、ザゼンソウやハスなどの自ら発熱し、体温を調節できる生物を対象とした研究を進めています。

所属教員
伊藤 菊一    
キーワード
植物    環境    生命科学    生物化学    資源    

研究室NEWS

2024年  4月22日 High-Impact Research from Plant PhysiologyのMost read 論文にランクインしました。

2024年  2月  6日 Plant Physiologyに論文を発表しました。

2023年  4月24日  「生物の科学 遺伝」  特集   花ハス:  歴史と最新研究 に寄稿しました。

2023年  4月21日  「温度ストレスによる生体応答ダイナミクス」に寄稿しました。

2022年  9月  6日 夢ナビ講義Videoが公開されました

2021年12月10日 内閣府連携「卓越した研究業績」の最先端研究として紹介されました

2021年  9月25日 宮沢賢治記念館通信125号に寄稿しました。

2021年  3月22日 月刊「細胞」特集 温度による生命活動制御にミニレビューを発表しました。

2021年  3月  1日 岩手県立水沢高等学校SSHで行われたハスの発熱現象に関する課題研究が「生物の科学 遺伝」に掲載されました。

2020年  9月30日 Arum maculatumを対象とした論文Biochemical Journalの表紙に採択されました(volume 477, issue 18)

2020年  4月27日 ザゼンソウの体温振動に関する論文をアーカイブしました。

2020年  3月15日 『盛岡高等農林学校と宮澤賢治』の編集に協力しました。

2019年  7月21日 第20回グスコーブドリの大学校において「賢治の得業論文を読み解く」と題する講演を行いました。

2019年  7月12日 『賢治学』 第6輯に「宮澤賢治の得業論文を読む」と題する解説を発表しました。

2019年  3月10日 藤根地区交流センターで開催された「ざぜん草まつり」で基調講演を行いました。

2019年  2月28日 「自然から学ぶすごい技をもつ生き物図鑑(文研出版)」でザゼンソウの解説をしました。

2018年11月  6日 ザゼンソウの体温データを用いた数理解析に関する論文を発表しました。

2018年10月  6日 ザゼンソウのチオレドキシンに関する論文を発表しました。

2018年  6月14日 ギリシャ・クレタ島に自生する発熱植物に関する論文を発表しました。

2018年  4月13日 農学部植物園に移植したザゼンソウが開花しています

2018年  3月  4日 小冊子「発熱する植物たち ザゼンソウ編」(第二版)を発行しました。

2018年  3月  4日 北上藤根「ざぜん草祭り」にて講演を行いました。

2018年  1月19日 京都大学数理解析研究所 RIMS共同研究(グループ型)で発表しました。

2017年12月18日 日経バイオテクにザゼンソウ研究の実用化事例が紹介されました。

2017年11月  9日 Helioxを使ったザゼンソウ呼吸に関する論文を発表しました。

2017年  7月20日 「化学と生物」の「今日の話題」に解説記事を発表しました。

2017年  7月  1日 岩手大学公開講座(農学部5学科実験講座)でミトコンドリア呼吸について講義と実験を行いました。

2017年  3月  8日 「ザゼンソウの不思議」オフィス気象キャスター動画の制作に協力しました。

2017年  2月28日 小冊子「発熱する植物たち ザゼンソウ編」(初版)を発行しました。

2016年10月14日 ザゼンソウ肉穂花序におけるPEP代謝に関する論文を発表しました。

2016年  4月20日 ザゼンソウの恒温性メカニズムに関する論文を発表しました。

研究内容

自ら発熱し、体温を調節できる植物 

一般に植物には発熱能力はなく、その体温は外気温とともに変動すると考えられています。しかしながら、驚くべきことに、ある種の植物においては、発熱によりその体温を積極的に調節できるものが存在することが知られています。例えば、早春に花を咲かせるザゼンソウ(座禅草)の肉穂花序(にくすいかじょ)は、氷点下を含む外気温の変動にも拘わらず、発熱調節により当該器官の温度を一定期間23℃程度に維持することができる恒温性を有しています。このように、特定の器官の温度を発熱により積極的に上昇させることができる植物には、ザゼンソウ以外にも、ハスやヒトデカズラなどが知られていますが、氷点下を含む寒冷環境で発熱し、体温を調節できる植物は国内外においてザゼンソウ以外には報告例がありません。例えば、ヨーロッパには、Arum maculatumと呼ばれる発熱植物が自生していますが、この植物における熱産生は一過的なものであり、ザゼンソウのような恒温性は観察されません。

 

体温を調節できる植物が有する特徴

それでは、ザゼンソウのように外気温変動の影響を大きく受けることがなく、発熱器官の体温をほぼ一定に保つことができる仕組みとは一体どのようなものなのでしょうか?例え話を使って考えてみましょう。ここに自ら発熱できる鉄の玉があったとします。外気温が変動する条件において、この鉄の玉を外気温より高く一定の温度に保つためにはどのような要素が必要でしょうか?(この場合、鉄の玉は上述したザゼンソウの発熱器官である肉穂花序に相当します。) 第一に必要な要素は、外気温の変動をキャッチする機能で、これは「温度センシング機能」と換言することもできます。もちろん、鉄の玉自身が発熱するための内在的な「熱産生メカニズム」も必須の要素です。さらに、発熱のタイミングや熱産生レベルを調節するためのいわば「温度制御の頭脳に相当するような機能」も必要でしょう。従って、ザゼンソウのような恒温性を有する植物においては、「温度センシング機能」、「熱産生機能」、および、「温度制御の頭脳に相当する機能」が備わっていると考えられます。これまでの我々の研究から、ザゼンソウの温度センシング機能は本植物の発熱器官である肉穂花序に存在するとともに、呼吸調節が行われる生理学的温度域においては、温度が高くなると呼吸速度は低下し、逆に温度が低くなると呼吸速度は上昇するような熱産生メカニズムが存在することが明らかになっております。さらに、ザゼンソウ温度制御の頭脳に相当する機能は、Zazen attractorで特徴づけられる独自のアルゴリズム(算法)により統御されていることが明らかになり、当該メカニズムを応用した温度調節計も実用化されています。

 

温度変化と逆相関を示す化学反応

上述したように、体温を調節できるザゼンソウのような発熱植物においては、温度変化と逆相関を示す呼吸代謝が重要な役割を果たしています。我々はこのような植物の恒温性の背後にある基本原理を解き明かすため、種々のアプローチを用いた研究を行っています。従来の研究により、哺乳動物の恒温性は視床下部を介した交感神経系の支配下にあることが知られていますが、神経系を持たない植物の恒温性は哺乳動物とは異なったメカニズムにより達成されていると考えられます。我々の研究は、植物の熱制御に留まらず、生物のホメオスタシスを支える基本原理の解明にも繋がるものです。

図1図2

 

Researchmap