• 受験生の方
  • 高校の先生方
  • 社会人・研究者の方
  • 卒業生の方
  • 地域の方
  • 学内・教職員
資料請求
研究室紹介

森林動態制御研究室(森林科学科)

 健全な森林(天然生林と人工林)を持続可能な方法で手入れする仕組みを、群落生態学、造林学、森林計画学の観点から研究しています。

 そのために、矛盾しているように見えますが、手入れ不足の過密人工林や皆伐跡地のヤブを調査することが多いです。

 2023年度からカブトムシの研究も始めました。

所属教員
國崎 貴嗣    
キーワード
フィールド科学    昆虫    森林    生態    生産技術    

研究室NEWS

2023年12月25日記載

数理・データサイエンス・AI教育にかかり担当学部での授業協力を求められているので,先送りしてきた統計解析(統計的因果推論,空間統計学,機械学習など)の自学自習に取り組んでいるところです。また,来年1/1から昇任する予定です。

 

2023年9月4日記載

新たな研究(カブトムシ研究)を始めたので、久しぶりに更新しました。

 

2019年8月29日記載

人見知りで、つい仕事で前のめりになりがちな國崎の性格を(質問を避けたがる学生さん達に)知って頂くべく、2005年の秋から14年ほどつけていた日記(地方大学教員の暮らし方)ですが、私的日記が含まれたブログのリンクは不適切とのご指摘がありました。ご指摘ありがとうございます。ご指摘は適切ですので、研究業績を除き、すべて削除しました。そして、あらためて「森林動態制御研(國崎研)」という名称に変更しました。今後には、授業資料の改訂に関することや研究メモなど、研究室教員の備忘録以外に誤解されないような日記のみ記録していきます。今後ともよろしくお願いいたします。

 

2018年12月11日記載

1997年4月の着任以来、22年目の勤務となりました。その経験を買われているのか、大学での授業(15回授業=1科目として)13科目、学内委員会・WG9つ、社会貢献活動(社会人研修講師や学外委員会などの兼業)6つを担当しています。

これに伴い、研究活動に充てる時間と労力がとても少なくなっており、どうしたものかと苦笑する日々です。その一方で、次年度から新たな授業科目(線形代数学入門、微分積分学入門)を自ら請け負うことにし、しばらく研究者としての活動実態が増えることはなさそうです(見て見ぬふりができない性格ゆえの自業自得です)。

このため、もはや20年前、10年前のような研究室運営は不可能となっており、現時点では研究室運営という考え方を廃止し、通常の講義科目と同様、「予約に基づく個別面談やメール相談」により学生さんに接する毎日です。

研究内容

2023年9月4日加筆

研究テーマの1つ目は「過密な針葉樹人工林の改善技術の開発」です。日本では、せっかく作った針葉樹人工林の一部がきちんと手入れされないまま放置され、林内が真っ暗になっています。すると、林床植生が乏しくなり、水土保全機能や生物多様性保全機能が低下します。

 

また、過密人工林をそのまま放置しておくと、台風や湿った大雪などで風雪害が発生し、幹が折れたり、倒れたりします。

林内を明るくするとともに、風雪害に負けない林木を育成するには間伐(本数調整)が必要です。では、どのような種類の間伐をどのくらい頻度・強度でおこなえばよいのでしょうか。こうした技術を開発するために、岩手大学演習林を主なフィールドとして研究を重ねています。スギ林に関しては密度管理指標と林冠閉鎖・競合・自己間引きとの対応関係について概ね明らかにできました。現在では、岩手県での再造林樹種として最も多く植栽されているカラマツについて対応関係を研究しています。こうした研究成果の一部は岩手県の森林環境税(いわての森林づくり県民税)の「いわて環境の森整備事業」の検証などにも活用されています。

 

研究テーマの2つ目は「針葉樹人工林の針広混交林への誘導技術の開発」です。人口減少時代に入った日本では、現在のように1030万haを超える人工林を今後も維持し続ける必要性は高くありません。特に、1960年代以降の拡大造林で天然生林から人工林に林種転換されたもののうち、必ずしも適していない場所に造成された人工林の一部は不成績造林地と化しています。こうした人工林内には天然更新してきた樹木が少なからず共存していることもあり、これを育成しながら、将来、林冠層で植栽針葉樹と天然更新広葉樹が入り混じった針広混交林に誘導することも「100年先を見通した森林づくり」では重要です。岩手大学御明神演習林内で、粗放的に管理された「スギ人工林由来の針広複層混交林」の林分動態について16年以上にわたり長期モニタリングを続けています。

 

研究テーマの3つ目は「天然生林の再生」です。生物多様性保全を考えるにあたり、地域固有の天然生林を再生・保全していくことが大事です。これは、林野庁が提唱する「広葉樹林化」と同様の視点であり、県の木がアカマツである岩手の場合、アカマツ天然生林(や多くはないもののスギやヒバの天然生林)も含めて「天然生林の再生」と位置付けています。地域の天然生林であるアカマツ林やコナラ林に加え、目的樹種を明示した広葉樹林化のモデルケースとして、樹種特性がよく知られているケヤキの天然更新についても調査しています。 最近では、マツ枯れやナラ枯れ予防として皆伐された壮齢天然生林跡地における広葉樹林化(天然更新による高木生広葉樹が優占する森林への遷移)について研究を始めています。

 

研究テーマの4つ目は、「昆虫の餌場としての広葉樹林の育成」です。「生物多様性に配慮した森林管理」と言われて久しいですが、私は、これまで、大型野生動物(ニホンカモシカ、ニホンツキノワグマ、ニホンザル)との共存に関する研究しかおこなっていませんでした。そんな私が昆虫の研究を始めることになったのは、本当に偶然でした。3つ目の研究テーマである「天然生林の再生」の一環として、コナラ天然更新試験地を設定しているのですが、2023年7月下旬、この試験地に雑草刈りで出かけたところ、たくさんのカブトムシがいることに気づきました。そこで8月末日まで、できるだけ毎日、試験地に出かけてカブトムシの個体数を数えたところ、8月初旬には約120匹に達しました。調査時間帯は午前8時前後なので、一般的にはカブトムシが少ないと言われる時間帯です。また観察していて気づいたのは、カブトムシが自ら樹皮を削り、樹液を滲出させてから樹液を舐めている行動です。これは、南方の自生種であるシマトネリコを本州で植樹した際に確認される行動として有名ですが、実は盛岡の自生種であるトネリコでも確認されています(八木橋ら 2014 東北森林科学会誌 19)。そして、今回、トネリコとはまた別の自生種で樹皮削り行動を確認できました。未発表なので、樹種名を控えますが、これまで木材としてはあまり注目されていない樹種です。つまり、これまで林業分野では雑木として注目されなかった樹種が、生物多様性保全(昆虫の餌場)に貢献することを示唆しています。なお、この試験地内にはカブトムシだけでなく、ノコギリクワガタもたくさんやってくるので、来年以降もコツコツと主要昆虫について調査していきたいと思っています。私は子供の頃には昆虫採集が好きでしたが,今はほとんど素人状態なので、私と一緒に昆虫(カブトムシやクワガタ)研究をしてくれる学生さんを求めています。