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研究室紹介

繁殖機能制御学研究室(共同獣医学科)

 私達は繁殖診療を通して動物の世代を紡ぎ, 生命を見つめます.
繁殖機能制御学研究室は1985年に最初の卒業生を輩出して以来, 動物の繁殖制御に関わる学理の究明を主要な柱として研究を進めています. 他の診療科に比べると歴史の浅い研究室ではありますが, 教員と学生が一体となって研究•普及活動に頑張っています.特に大動物の繁殖障害の原因解明,新しい診断技術や治療法の開発などを目的に,牛の発情同期化・排卵同期化に基づく繁殖成績の改善技術や超早期妊娠診断法などに関する研究を進めています.また,東北地方の大学に相応しく,馬や野生動物の繁殖管理に関する研究も行っています.

所属教員
髙橋 透    
キーワード
動物    家畜    生命科学    生産技術    産業動物    

研究内容

概 要

 産業動物(主に牛と馬)の妊娠成立の分子機構を解明し、繁殖障害の診断や治療に役立つ技術開発を目標にしている。また、研究成果を活かして酪農/肉牛農家の経営改善に繋がる繁殖技術の提案を行うとともに、岩手の馬産振興の一助として、地域の農用重種馬の繁殖診療も行っている。

 

牛の繁殖研究

 1980年代後半に約7800kgであった日本の乳牛の年間乳量は、2010年代初頭には約9300kgへと約20%の増加をみた。しかしこの間に受胎率は約20%低下し、肉牛においても同じ期間に受胎率が約10%低下した事が報告されている。家畜における「生産と再生産(繁殖)」は相反する概念として扱われる事が多いが、私達はこの既製概念に敢えて疑問を投げかけ、受胎率向上を追い求めない繁殖成績改善の技術開発に取り組んでいる。

 受胎率は繁殖成績を評価する指標の一つであるが、受胎率低下による悪影響の最たるものは分娩間隔の延長である。過去約30年間で乳牛の受胎に要する人工授精回数は0.5回増加し(1.8回→2.3回)、分娩間隔は31日延長した(402日→433日)。これは、授精回数が1回増えると分娩間隔が約2ヶ月延長する事を示している。分娩間隔の延長による損失は、乳代で相殺されたとしても1頭1日あたり約¥500以上に上るとする報告があるが、受胎率低下による真の損失は授精技術料や凍結精液等のコストよりも遥かに大きな、分娩間隔の延長よる損失である。

 分娩間隔を短縮するにはどうしたら良いのであろうか?考えられる方策の一つは受胎率の向上であるが、この問題の解決は容易ではない。しかし、もしも受胎率低下と分娩間隔の延長のリンクを断ち切る事が可能になれば、「受胎率は低いままだが、分娩間隔が短縮した」状態を現出させる事は可能である。

 私達は、授精後出来るだけ早期に受胎/不受胎を確定し、不受胎牛には速やかに再授精を実施することで、授精1回当たりの受胎率は現状のままであったとしても分娩間隔を短縮する事ができるのではないかと考えた。現在では高性能な超音波診断装置が開発されて、授精後25日前後には実用的な妊娠診断が可能である。しかしこの時点で不受胎が確定したとしても、ここから定時授精プログラムを実施して再度の授精に至るまでには更に3日を要してしまう。そこで私達は、「発情回帰よりも前に不受胎を判定しよう」という目標を掲げて研究を進めている。その結果、授精後16〜18日齢で約80%の確率で受胎/不受胎を判定する事が可能になっている。また、不受胎の場合には「分娩間隔延長を最小限にした再授精が出来るように、再授精は発情観察をしなくても定時に授精ができるように」という目標のもと、不受胎の場合には初回授精から24日目に定時再授精を実施する手法を検討し、牛群の妊娠率向上を確認している。

 私達のこれまでの成績から、超早期妊娠診断(空胎摘発)と的確な再授精によって乳牛の分娩間隔を短縮できる事が期待される。しかしこの手法は、分娩間隔を短縮する事は出来ても牛の繁殖機能そのものを改善する事はなく、いわば弥縫策というべきものである。私達は、超早期妊娠診断を軸にした繁殖管理技術によって分娩間隔の延長を防ぎつつ、繁殖機能の本質的な改善をはかる事こそが究極の目標であると考えている。

 

馬の繁殖診療

 南部地方(南部氏が領有した現在の岩手県北上市から下北半島までの地域)は古より名馬の産地として知られていた。中世日本史の転回点となった諸戦場における南部産の駿馬の活躍は「平家物語」等に詳しいが、富国強兵の時代に進行した外国種との交雑によってかつての「南部馬」も純粋種は既に失われ、現在では岩手県内の馬の飼養頭数は年々減少の一途を辿っている。しかし、このような状況にあっても岩手には生活に根ざした馬と人との固い絆が今も残されており、毎年6月に開催される「チャグチャグ馬コ」の際には、馬を愛して馬と共に生きて来た人びとの熱い想いを垣間みる事ができる。馬の歴史と文化が未来につながることを願って、私達は微力ながらも「繁殖技術」で地域貢献を果たしてゆきたいと思っている。

卒業研究・修了研究テーマ例

近年の卒業研究テーマ

2016年3月

  •  授精後23日で不受胎を確定して翌日に定時授精を実施するウシの繁殖プロトコルの開発
  •  時間分解蛍光免疫測定法によるウシ妊娠関連糖タンパク質測定系の構築

2015年3月

  •  オキシトシン負荷試験後の血中PGFM動態とインターフェロン応答遺伝子発現によるウシ胚生存性の

 判定法に関する研究

  •  泌乳牛における人工授精後の膣内プロジェステロン徐放剤留置期間がその受胎性に及ぼす影影響

2014年3月

  •  ホワイトヘッファー病2型と分類されたホルスタイン牛2例の発情周期と卵巣動態
  •  オキシトシン負荷試験後の血中PGFM動態解析によるウシ胚の早期生存性判定に関する研究