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研究室紹介

比較薬理毒性学研究室(共同獣医学科)

私たちの研究室では,生体内物質や合成化学物質の薬理および毒性作用に着目し,種々の物質で誘発される作用や変化の作用機序メカニズム解析や種差・系統差に関する研究を行っています。

所属教員
佐藤 洋     鈴木 忠彦    
キーワード
伴侶動物    動物    実験動物    生命科学    生物化学    

研究内容

ホルモンにより誘発される増殖性病変の生物学的特性解析と種差・系統差に関する研究では,エストロジェンの細胞増殖刺激作用によるラット下垂体腫瘍の研究を行っています。持続的なエストロジェンの暴露により,エストロジェンレセプターを有する器官が反応し,なかでも下垂体は増殖性変化を示します(図1)。この変化は,下垂体の前葉にあるプロラクチン分泌細胞が増殖し,組織学的に過形成,腺腫(良性の腫瘍)そして腺癌(悪性の腫瘍 = がん)に進行する変化です(図2)。また,この増殖性変化は,多くのラットに共通してみられる反応ですが,ブラウンノルウェイ(Brown-Norway, BN)ラットやドンリュー(Donryu)ラットではみられないことが明らかになっています。この系統差の原因を追求することによって,エストロジェンによる下垂体腫瘍の発生メカニズムと抑制因子を明らかにできると考え,研究を進めています。 細胞傷害性抗がん剤による毒性の発生機序解明と予防の探索研究では,臨床で頻繁に用いられる抗癌剤による毒性変化のうち,歯,味覚,嗅覚などの器官毒性に着目し,その毒性発現機序の解明と予防法の探索的研究を行っています。抗癌剤による歯の毒性はあまり着目されない変化ですが,終生歯の伸長する動物はもちろん,永久歯を持つ動物やヒトにおいてもQOL(quality of life)上重要な問題です。これらの歯に対する毒性は,げっ歯類を用いることにより,より詳細に解析することができ(図3),その障害の特徴から大きく4つの作用機序に分類することが可能です。また,歯の組織の近くに存在する鼻腔は,呼吸器としての働き意外に,臭いを感じる嗅覚の一部として重要な働きをしています。その臭いを感じ取る細胞(嗅細胞)が,抗がん剤の重要な毒性標的細胞となっていることが分かってきました(図4)。ある種の抗がん剤を投与すると,血流にのって抗癌剤が鼻腔の嗅細胞に到達して(図5),細胞傷害を惹起させ嗅覚障害を起こすことが明らかになりました。今後は,抗癌剤による味覚障害に関しても研究を進展させる予定です。    

図1

図1.ラット下垂体の肉眼変化.左:正常,右:エストロジェンにより誘発された下垂体腫瘍。OP: 視神経,P: 正常下垂体,SB: 蝶形骨(脳底骨),T: 腫瘍化した下垂体,TN: 三叉神経

図2

図2. 下垂体の組織像.エストロジェン誘発下垂体増殖変化の経時的変化.Control: 正常下垂体,Week 3: 過形成, week 5: ラトケ嚢の拡張と出血, week 7: 腺腫と類洞の拡張・出血, week 9: 腺腫の進展, week 13: 悪性化し腺癌となる。ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,倍率は全て同じです。

図3

図3. マウスの上顎切歯エナメル器に対する各種抗がん剤の作用.MMC = マイトマイシンC,ADM = アドリアマイシン(ドキソルビシン)。エナメル器持続傷害型の抗がん剤(抗生物質系抗がん剤)。

図4

図4. 嗅上皮の組織学的変化.抗がん剤投与24時間後の鼻腔粘膜組織で嗅上皮のアポトーシス(細胞死)がみられる。上: 正常,下: PTX(パクリタキセル)投与,左: HE染色,右: TUNEL染色(アポトーシス細胞)

図5

図5. 抗がん剤の組織分布解析.VCR: ビンクリスチン,PTX: パクリタキセル,5-FU: 5−フルオロウラシル